McGuffin(マクガフィン)

【YOUR SONG IS GOOD×cero】20代を振り返る。今の彼らを形作るもの

5月10日に6thアルバム『Extended』を発表したYOUR SONG IS GOOD(以下、YSIG)と、5月17日に『街の報せ』12inchアナログ盤を発表するcero。共にインディーズレーベル「カクバリズム」に所属するレーベルメイトだ。それぞれ20代前半でバンドを結成し、YSIGは結成19年、ceroは結成12年を迎える。30代と40代、「人生は次のコーナーに差し掛かって…」(cero『街の報せ』収録曲「ロープウェー」)という歌詞のように、ステージを変えながら成長してきた2組に、改めて20代の頃を振り返ってもらった。

20代のときの“遊び”が、今の活動に繋がっている。

髙城晶平(以下、髙城) 僕と橋本くんは高校が同じだからずっと一緒にいるんですけど、バンドを始めたのはちょうど20歳くらいからですかね。

荒内佑(以下、荒内) 僕もその頃から二人とは知り合っていて、今32歳だから12年前から一緒にいることになるのかな。

橋本翼(以下、橋本) 僕は別のバンドをやっていたので、ceroに正式に合流して、今の3人のかたちになったのは27歳くらいのときですね。

サイトウ “JxJx” ジュン(以下、JxJx) その頃から気持ちは変わらない感じなの?

橋本 僕はあんまり変わらないかなぁ。

髙城 え、変わらないの?僕は、変わりましたね〜。色々経てきたなぁというお思いがあります。

荒内 ceroの3人でいるときは当時の気持ちに戻っている気がしますけれど、ceroを離れたら普通の30代だと思いますね。

髙城 魔法が解ける感じね(笑)

JxJx その感覚はわかるな(笑)。僕とモーリスも武蔵野美術大学の同級生。今44歳で、大学4年でバンドを始めているから、それから今までずっと一緒だね。

ヨシザワ “モーリス” マサトモ(以下、モーリス) 20代をずっとやってる感じなんだよね。

松井泉(以下、松井) ずっと今みたいにライブが終わったあとも飲みに行かない感じなんすか?僕はYSIGに入ってから3年くらいになりますけど、あまりにも打ち上げがないから一人で飲んで帰るようになりましたよ(笑)。

JxJx  20代の時はよく飲んでたよ、今はすぐピークが来るから、もういいや(笑)。そういう変化はありつつ、普段のノリは変わらない気はするんだけど。

荒内 20代の頃、遊んでおいてよかったなって今になって思うんですよね。後悔も沢山あるんですけど。練習や録音のためにスタジオに行っても、各々の楽器を変えて遊んでみたり、練習を終えた後にも友達の家へ行って酒も飲まずに朝までしゃべったりして、そうやって遊んでいたときのことが今の活動にリンクしているなって思います。

モーリス 20代のときって、例えば1年間って区切った時のスピード感がすごいよね。翌月のライブのオファーをもらったとして、実際にライブする段になったときにはもう自分たちのスタイルが変わっていて、オファーしてくれた人の印象と全然違うライブをしちゃうとか、YSIGは短い間で変化を繰り返してました。

JxJx いきなりインストになってたりして、呼んだ人が「こんなバンドだったっけ?」って唖然とするっていう(笑)。20代のときは目にするもの全部が新鮮で面白くて、興味の移り変わりが激しくてね。音楽聴いても全部がかっこよく聞こえて、どんどん興味を広げていってもハズレがない気持ちで楽しめた。年をとると「これは知ってるな」って思うことが増えちゃって、その感覚がだんだんとすり減っていってしまっているところがあるから、そことどう対峙するかって違うテーマがあるね。

アイディアが先行する20代、技術を高める30代。

松井 若い時はバカしかやってないですね(笑)個人練習とかもまったくやってなかったし。熱意はあるんですけれど。

JxJx でもサボってるわけじゃないんだよね。良い音楽をやりたいっていう熱意があって、でも実力が伴わない。それが面白いよね。

髙城 20代の時は技術よりアイディアが先行してる感じじゃないですか。アイディアはどんどん出てくるんだけど技術が伴わない、でもとりあえず形にするっていうのを繰り返してました。

モーリス それこそアイディアだけで走っていて、そのアイディアを具現化するためにこういう音を弾けるようになりたいなっていうところまでが20代。30代に入ると、技術についてももっと広く捉えるようになったかもしれないな。もう少し芯があって、訴えかけられるものを求めるようになった。グッとくる部分を表現するためにはアイディアだけじゃ足りなくなっていくんだよね。

髙城 僕たちも、ここ数年でアイディアから技術へモチベーションがシフトしているのは感じています。改めてテーマにはしないんですけれど、作る楽曲からしてもメンバー間にその共通認識があるんじゃないかな。もちろんアイディア先行の体力も残っているんですけれど、今は上手くなっていくのが面白いみたいな鍛錬の時代を迎えている気がします。

橋本 ceroじゃないと作れない楽曲がもう少しありそうだから続けているっていうところはあるよね。「ポップスではまだリズムについて未開拓な部分がある」という感じのことを前にあらぴーが言っていて、たしかにと思ったのでそこを開拓していきたいですね。その先にまた新しい景色が見えたらいいなっていうモチベーションでやってます。

JxJx 僕はやっぱりリスナーの感覚なんだよね。クリエイトするっていうテンションより「自分の好きな音楽を聴きたいから自分で作る」という感覚で、やればやるほどけっきょくそれを強く感じる。

髙城 わかりますよ、その感覚は僕たちもあります。

JxJx 自分の曲を、自分の好きな他の音楽と並べて聴いてみたいという気持ちで作り続けているんだけど、思ったようなものができないからずっと続けてる(笑)人に提供する曲を作っているときと、バンドで曲を作るのは全く違う感覚なんだよね。バンドで作るときは、より自分のリスナーの部分が強く作用する。だから聴きたいやつがないと作れないっていう部分も近年強くなってるね。

モーリス 最近はジュンくんが作った曲をメインにしているから、ジュンくんのモチベーションと他のメンバーのモチベーションは、少し違うかもしれない。今回のアルバムに関しては作曲とはまた違った目線で、より音色(おんしょく)へのこだわりとか、微妙なフレーズの違いなどを試すようになった。フレーズを提案している時点では、最終的にジュンくんが具現化したいダンスミュージックに必要なパーツなのかどうなのかわからないんだけど(笑)、それでも僕の理想とするギターを乗せてみたいっていうモチベーションだね。

JxJx ここがバンドの面白さなんだよね。自分で曲を作れば自分の好きなようになるけどそれで終わっちゃう。でも、バンドメンバーが関わることによって未知なるところにいける。想像していたものよりもかっこいいものを返してくれたりすると、一気に先に進んでいく感じがして、だからやめられないんだよなぁ(笑)。パーカッションも自分じゃ叩けないから、入ってくるともう興奮しちゃって。

松井 YSIGにはドラムしか打楽器がなかったから、わりと自由にやらせてもらってますね。グルーヴし放題みたいな(笑)だからすごい楽しい。

20代の根拠のない自信と楽観、焦りからの行動開始。

髙城 僕が属していた日本大学芸術学部は、僕と同じような選択をする人も多かったので、そこまで「僕は就職せずに、音楽に身を投じるぞ!」って硬く決意するタイミングもなかったんですよね。「絶対なんとかなるだろう」っていう漠然とした自信があって、なんとなく楽観していましたね。

橋本 僕もそういうところがあったかも。四年制の一般大学で周りが就活しているなか、ひとり学内をぶらついてました。

髙城 でも昔、橋本くんから泣きながら電話がかかってきたことがあったよね?「俺、音楽やっててもいいのかなぁ」って(笑)あれなんだったの?

橋本 あれはたしか、大学卒業して何年か経ってから中学時代の友達と飲んだ時に「音楽で食べていくなんて無理でしょ」みたいなことを言われて、ちょうど焦りもあった時期だったのか、それで電話したんだと思う(笑)。そこからceroのサポートメンバーになったときに、「レーベルも決まってないけど、とりあえずファースト作ってみない?」って言ったんだよね。

荒内 僕は楽観どころか、なんにも考えてなかった。「ファースト作ろう」って橋本くんに言われたそのときに、「あ、焦る時期なんだな」って思ったくらい(笑)そのときもう20代後半ですからね。でもその前に髙城くんが「親に就職しろって言われたから、相談したいことがあるんだ」って言ってきたことがあって…。

髙城 えー!そんなことあったっけ!

荒内 吉祥寺のファミレスに集合させられて、「ハリボテでもいいからとりあえず何か作りたいんだ」って持ちかけられて。

一同 (笑)

髙城 僕めちゃめちゃ焦ってるじゃない!何が「楽観してましたね」だよ(笑)とにかく、そのアルバムからですね、今のceroのかたちができたのは。

音楽が好きだという気持ちを全うするために、決断したこと。

松井 実は僕は就職してるんですよね。スタジオに入って、インターンをしていました。この道でやっていこうと思っていた時に、前のバンドと出会って、それが楽しくなったからそのまま続けてここまで来ちゃった。楽しい方へ楽しい方へと進んで来たら、今の場所に辿り着いたっていう感じですね。

JxJx 僕とモーリスの周りは、デザイナー志望でちゃんと就職する人が多かったかな。そんななか当時は別のバンドだった僕らは、音楽が楽しくて全く就職するつもりがなくて。しかもそのとき僕は、当時のバンドで音源を出していたし、レコード屋でバイトもしていて、もう就職しないための条件は完璧に揃っていたんだよね(笑)。でもやっぱりそんなに甘くはなくて、バイトを辞めて1ヶ月のアメリカツアーに行ったはいいものの、帰ってきたら働くところがない。そのときは、友達にたよったりしながら、どうにかしてWEBデザイナーとしての働き口を見つけたんだよね。

モーリス うちのバンドは働きながら活動している人もいて、大学卒業したらそれぞれの時間の使い方が変わってバンドに対する熱が散漫になったときもあった。そのときにジュンくんが「このまま、なんとなくで草野球をしていていいのか。勝負する野球をやっていこうぜ」と宣言したんだよね。だらだらやってきちゃったんだなとそのとき気がついて、「音楽をやる人になろう」と僕も決意しました。

JxJx 好きなことだからやっているときは楽しいし、惰性で続いちゃう部分もあるんだけれど、どうも自分の性格の場合、それだけじゃダメになっちゃうことに気づいてしまったんだよね。プロのデザイナーの仕事はバンドに気が散ってる状態でやれるほど、そんなに甘くなかったっていうのも大きかった。じゃあ、今やっていること(バンド)が好きだっていう気持ちをトコトン全うするために、仕事を辞めて、がっつり音楽活動にシフトする決意をしたんだよね。

髙城 そのときに、仕事を辞めなかった人もいるわけじゃないですか。そのことに対して焦りや憤りは感じなかったんですか。

JxJx そのとき僕は独身だったけど、家庭がある人もいたからね。状況が違うし、とりあえず自分の好きな気持ちをフルマックスで発揮すればバンドはどうにかなるっていう気持ちがあったんだよね。「とりあえず俺は行くから!あとは無理強いしないから!」っていう感じだったかな。とにかく心のそこから音楽がやりたかったっていう。

音楽を聴いて気持ち良い感覚は、幼いときから変わらない。

JxJx 結構時間をかけてしまったんですが、5月10日に6thアルバム『Extended』を発表しました。今回は「ダンスミュージックとしての快楽」について考えたんです。「音楽を聴いていて気持ち良さを感じるとき」って人それぞれ違うけど、色々な経験を経て進化しているのかなって思っていました。でも突き詰めていったら、根源的なことは小学生くらいのときから何も変わっていなかった(笑。そういった極めて個人的な感覚を、メンバーと共有することで違う次元に引っ張り上げてもらうっていうバンドのダイナミズムを感じながら作ったアルバムですね。

髙城 つまりは、自分が気持ち良いことをやっちゃったってことですね(笑)

JxJx そうそう、いよいよそういう恥ずかしい感じになっちゃったんだよね(笑)

モーリス ライブをやることでリスナーとは繋がれている感じがするよね。リリースすることで何を伝えられているかは正直わからないけど、自分がライブをしていて気持ちが良いとか、そういうことから何か感じてもらえればいいのかなって思いますね。

JxJx あとは、自分が昔の音楽を聴いて何か感じることがあるように、僕たちが死んだあと…、もうYSIGがどういう人間たちだったかの情報も忘れられたような頃に、音楽だけ残っていて、それを聴いた人に何かしら感じてもらえたら楽しいかな。夢みたいな話ですけど、そんなことがあったらいいなと思います。

髙城 僕たちも5月17日に『街の報せ』というアナログEPを出します。僕の子供はマチって言うんですけれど、『街の報せ』は彼をモチーフの1つとして、荒内くんが作ってくれたものなんです。子供って、漫画とかレコードとか、手に取れるところに置いておくと色々触って出したり閉まったりして、ディグっているんですよ(笑)。親のパソコンを勝手に触ってデータをディグる、っていうこともない事はないんでしょうけど、やっぱり物で残しておくことで次の世代に受け継がれるものなのかな、って最近痛感しました。

GREENROOM FESTIVAL ’17開催。2度目のYSIG、初登場のcero。

JxJx やっぱり、ライブをやる環境は演奏にも影響しますよね。「GREENROOM FESTIVAL」はお客さんも「良い感じに」すごく盛り上がってくれるので楽しい。ライブだけじゃなくて、アートの展示も盛り上がってるところも面白い。

髙城 YSIGはもちろんアルバムの曲もやるんですよね。

松井 「GREENROOM FESTIVAL ’17」で気持ちよく聴いてもらえないとやばいんですよ(笑)今回アルバムの楽曲を録音するときに、直前になってジュンさんが、「ちょっと待って!やる前にこれ見て」って言ってiPhone差し出してきて、サーファーの動画を見せてきた。「この感じで」って、どんな感じやねん、と(笑)

JxJx そんなことあったね(笑)、いや、絶対気持ちよく聴いてもらえると思います。

髙城 ceroは初出演です。時間帯は夕方で、夕方のceroは良いんですよ〜(笑)あと僕の父親がサーファーなんです。僕自身サーフィンは、小さい頃に何度かやったことがあるくらいですが、ジュンさんにサーフィンを勧めようとしたことがありましたね。「サーフィンは待ちのスポーツなんですよ、波をじっくり待つものです」っていう、僕が父親に聞かされて一番サーフィンって良いなって思ったエピソードをしたけど、ジュンさんにはハマらなかった(笑)

JxJx 僕は待つのがちょっと苦手なんです(笑)とにかく、二度目ですが「GREENROOM FESTIVAL ’17」でのライブは絶対気持ち良いと思いますよ!

<INFORMATION>

YOUR SONG IS GOOD / 6th Album『Extended』

品番: 初回限定盤 DDCK-9006 通常盤 DDCK-1050
価格
初回限定盤(2CD)¥3348(税込)税抜価格: ¥3100
通常盤(1CD)¥2808(税込)税抜価格: ¥2600
発売日: 2017.05.10
レーベル: カクバリズム

DISC 1
全7曲収録
1. Cruise
2. New Dub
3. Mood Mood
4. Double Sider
5. Palm Tree
6. On
7. Waves

Amazonで購入

初回限定盤DISC 2 “Remixes”
全5曲収録
1.The Cosmos (Being Borings Remix)
2. Changa Changa (Lord Echo’s Disco-Remix)
3. Re-Search(FORCE OF NATURE Remix)
4. Waves(Gonno Remix)
5. Double Sider(XTAL Remix)

Amazonで購入

cero / 「街の報せ」(12 inch Singleアナログ盤)
【アナログ盤全4曲収録】
発売日:2017年5月17日

品番:KAKU-081
[収録曲] SIDE A
•街の報せ(Original)
•ロープウェー
SIDE B
•よきせぬ
•街の報せ Rework 黒田卓也

価格¥1800+税
レーベル: KAKUBARHYTHM

CDを購入

GREENROOM FESTIVAL 2017

日程:5月20日(土)・5月21日(日)
会場:横浜赤レンが地区特設会場
HP:http://greenroom.jp/

  •  (2)