極上の音楽でフロアを揺らす
学生DJクルー“WASP”とは?
(後編)

前半の“SWARM”会場から場所を変え、アフターパーティが行われる、渋谷のクラブOATHへ移動。
結成の経緯から今後の展開まで、今回のイベント全体の首謀者であるWASPの全貌をクルーのソウタくん、ゲンくんに話してもらった。
“どんどん違う分野の人に集ってもらって、繋がっていくというHUBみたいな存在”

―SWARMお疲れ様でした!
ソウタ:ありがとうございます!
―では、改めて、WASPについて色々聞いていければと思います。このクルーを始めたきっかけから聞いていきましょうか。
ゲン:名古屋出身なんですけど、高校生の時にTwitterで観ていたイベントがソウタがやっていたイベントで。
その頃は全然面識なかったんですけど、こっちが勝手に観ていたんです。
それで、上京して、大学入る前に合宿があるんですけど、そこで偶然ソウタが隣のベッドで。かなり驚きましたけど、じゃあ、なんかやるしかないね、ってことになって入学後の4月23日にすぐ立ち上げしました。
一すごい偶然ですね。
ゲン:普通に横のベッドだから喋っていたら、あれ?変に話し合うな、みたいな(笑)。
ソウタ:僕も大学入ってから何かやりたいっていう気持ちはあったんです。だからすぐはじめられました。コンセプトに関しても、やっていくうちに割と見えて来て。

―そもそもクルーを立ち上げた理由は?
ソウタ:僕ら大学生なのでもちろん大学の友達も来るんですけど、専門学生の子や大学行ってない人たちもたくさん来ますし、同世代で色んな価値観を共有できたらいいなと思ってます。それが繋がって行ったら楽しいじゃんって。
なになに系とか、そういう境目を無くそうとも思っていて。
かっこいい人は何やっていても、違う分野でも共通するものがあるじゃないですか。

ゲン:色々な分野があるんですけど、その中心にWASPの二人がいるので芯がぶれないというか。どんどん違う分野の人に集ってもらって、繋がっていくというHUBみたいな存在になりたいですね。
ソウタ:なのでアートのイベントを今日お昼にやった理由もそこのテーマがあったからで。 クラブや音楽イベントに来ない方とも繋がりたかったし、いろんな芸術家との交流の場にもしたかったので。

―ちなみにWASPという名前にはどのような意味が込められていますか?
ソウタ:WASPは単体で蜂っていう意味があるんです。
なので、それと絡めてイベントのことをHIVEって蜂の巣って意味にしていて。
蜂が集まる場所っていう意味で。 尖ったヤツがたくさん集まるのがWASP。
蜂の群れという意味でアートイベントの方も『SWARM』って名前にしました。
“FKJ、MURA MASA。その辺が好きですね。あとHONNNEとか”

―ちなみに今日はDJタイムがありますけど、音楽のルーツは?
ソウタ:僕は親の影響でブラックミュージックが好きで。中学生の時はリル・ウェインとか聴いていました。
高校生の時に、たまたま未成年限定のイベントがあるっていうのを聞いて面白そうだなって友達と一緒に行ったんですよ。そしたらバチバチにヒップホップやっている子がいて。
その子が僕と同い年という事を知って。それでそうこうしているうちに、そこの代表の人たちと仲良くなって、「入りなよ」って誘っていただいたのがDJのスタートでしたね。それが高一の時。
―ゲンさんがTwitterで観てたヤツですね。
そうです。
そのクルーがクラウドナインっていうクルーだったんですけど、一時期バズって。高校生ながらに800人とか1000人とかWOMBのメイン全館貸し切ったりしました。

―じゃあ、今もHIPHOPがメインで?
ソウタ:いや、もちろんHIPHOPは好きなんですけど、だんだん趣味が変わって来て。
最近はなんかクラブで聴く音楽が好きじゃないなーっていう風になっちゃって。
今好きな音楽はもっとBGMみたいな、ゆったり聞ける方が良いですね。なので、最近はWASPのイベント以外では回してないんです。

―具体的によくかける曲とか、アーティストは?
ソウタ:FKJ、MURA MASA。その辺が好きですね。あとHONNEとか。
ベッドルームR&B。なので、今日のパーティもそんな感じで行こうかなと。
ゲン:僕はなんでも聴きます。
かっこいいモノはジャンルにこだわらず聞いているので、逆に最近悩んでいるのが、どのジャンルでDJしようかなって。

ソウタ:あ、あと僕も追加でいいですか(笑)。
Jazzyなサウンドを使っているテックハウスが自分的に今ハマっていて。
うちは両親がJazzオタクで。レコードとかクソ持っていて。その影響かわかないですけど、最近急にJazzyな音に目覚め始めて。
―それこそFKJとかMURA MASAが好きな理由も分かる気がします。
ソウタ:日本のヒップホップでいうとKANDYTOWNとか。
昔のR&Bとかもメッチャハマっていて。共通してそういうサウンドが好きです。

―ゲンさんのDJを始めたきっかけは?
ゲン:DJを始めたきっかけは、SKRILLEXのULTRA JAPANの動画を観てですね。
その年のお年玉を使って頑張ってめちゃめちゃ小さい機材を買って。
周りにDJやっている友達が2人いて。その子たちに誘われて、名古屋でイベントをしました。未成年限定でクラウドナインを真似してなんですけど。

ソウタ:あ、そうクラウドナインで思い出したんですけど、そこで僕はめちゃくちゃ色々なことを学びました。 70人くらいの団体だったんですけど。
どんな風に人をまとめたらいいかとか、自分たちのブランディングの仕方とか。その経験が今も生きてます。
ゲン:僕は人と喋るのが好きです。まとめるのはソウタでぼくは外交的な役割。
ソウタ:明確には決めてないんですけど、二人でうまくバランスが取れてるのかもしれないです。ゲンは営業部長。

―普段、大体どこでイベントをやっているの?
ソウタ:渋谷のWOMBラウンジですね。WOMBの二階です。
あとは、WALL&WALL、夜の名前はVENTっていうんですけど。
表参道にあって、アジアで一番音響がいいって言われているところです。
NASもライブしたことがあるんですけど、そこで300人規模くらいのやつをやったりしています。あとは小さい箱でちょいちょいやっているっていう感じです。
渋谷、表参道付近が多いかな。
“理想は88RISING”

―似たような動きで目標にしているっていう人たちっていますか?
ゲン:レベルが全然違うので恐縮なんですけど、理想は88RISING。
代表のショーン・ミヤシロさんが同じようなことを言っていて、アジアと世界のHUBになるという事もそうですし、いろいろフックアップしていて。
そのおかげでUSのビルボードやアップルミュージックとかでもアジアの曲が取り上げられて。僕らのやりたいことってこういう動きなのかなって思います。
ソウタ:スケールは違うけど。

―でも構造は一緒。
ソウタ:そうですね。今、実際に、例えばレッドブルでインターンしている友達がいるんですけど、彼らまわりと僕らのイベントが繋がる、みたいな。
―学校には、そういう動きをしている人はいないの? 早稲田だったらいそうかなって。
ソウタ:学校の団体は割と専門的なんじゃなですかね。内輪っぽい感じにも見えちゃって。 やっぱサークルってなると、その中でとどまっちゃうような。

―大学を卒業したら、このクルーはどうなっちゃうんですか?
ソウタ:卒業しても続けたいですね。
今は二十歳の世代でやっているけど、逆に卒業したら俺らの世代から20代まで全部ターゲットにしようと思っています。
例えば企業に勤めている人もいっぱい来るだろうし。そこは変わんないと思います。
―2人の進路はどうなるんです? 模索中?
ソウタ:大きくは考えてなくて。
留学するのでその前後にイベントを仕掛けているのと、これはまだ確定ではないですけどアパレルをSNSで展開していこうかなとは思っています。
―ありがとうございました!
ソウタ & ゲン:ありがとうございました。
ソウタ:あ、あと留学前最後のイベントを8月15日に原宿のペントハウスでやります。ロケーション、クオリティ共に過去一になりそうな感じがするので、ぜひいろんな人に来て欲しいです。

Epilogue
今回WASPの二人、イベントの参加者のインタビューを通して感じたことは、若者の遊び方が“遊びを享受するという事”から“遊びを自ら作り出す事”へ変わってきているという事。
ひと昔前は音楽をやるコト、オシャレするコト、つまり表面的な事柄がカッコイイとされていたけれど、今はリアルな場で他業種、他ジャンルを繋げるコト、発信する場を設けてあげるコト、そのような役割を担うという“コト自体”に価値を見出しているのではないだろうか。
SNSの誕生や動画・スチール機材の進化によりクリエイティブへの参加ハードルが下がったことで、若者のクルーが続々誕生し、それなりの成果を生み出すようになってきていると感じる。
キュレーション力や企画力に力を置いた、裏を返せば一括りにしづらいオルタナティブな遊びや遊び方がこの先、さらに重要になってくるのではないでしょうか。

■Profile
▼WASP @w__a__s__p
ゲン(@yamadagen)
ソウタ(@_sotayamashita_)
Text:Keita Ando
Photo:Takahiro Kikuchi
Assistant:Hideki Uchida