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CULTURE VIDEO MAGAZINE FOR YOUTH

【Gotch×Creepy Nuts】俺たちの30歳って?

「車の中」はなぜか話が弾む。一定の距離感で座り、同じ方向、同じ景色を見て、同じ音楽を聴く、ちょっと特別な空間だ。そんないつもと違うシチュエーションで、「20代と30代の人生」についてドライブをしながら語ってもらうシリーズ“8minutes dirve”。

第一弾は、ロックとヒップホップ、異なるジャンルで活躍するアーティスト2組をゲストに迎えて「30代になった時の姿」を語ってもらった。

2017年4月24日に2年5ヶ月ぶりのソロシングル「TAXI DRIVER」をリリースしたGotch(後藤正文)。Gotchといえば、ミレニアル世代男子の青春ど真ん中を駆け抜けたバンドASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカルであり、新しい時代とこれからの社会を考える新聞「THE FUTURE TIMES」の編集長としても活動をする人気アーティストだ。

Creepy NutsはAbema TVで放送中の「フリースタイルダンジョン」でモンスターとして出演し、MCバトル最高峰の「UMB」を三連覇した、日本一のラッパー「R-指定」と、ターンテーブリストでありトラックメイカーとして活躍する「DJ 松永」による1MC1DJユニット。最新アルバムに収録されている『助演男優賞』はYoutubeでおよそ400万回再生されており、ソニー・ミュージックエンタテインメントからのメジャーデビューも決まっている今注目のアーティスト。

2017年1月27日にASIAN KUNG-FU GENERATIONバンド結成20周年を記念した、初のトリビュート・アルバム「AKG TRIBUTE」に、Creepy Nutsも参加している。

「20代前半はライブをやっても全然お客さんが入らなかった」と語るGotchと「30歳までにジャンルを超えた名曲を残したい」と誓うCreepy Nuts。今回初の対談となる2組が語る「20代、30代それぞれの生き方」とは。

俺らの世代、アジカンさんはみんなドンピシャです。-Creepy Nuts-

Gotch:「みんなちがって、みんないい。」が面白い曲だなと思って聴いてたんだけど、Creepy Nutsが2人組のグループだとは思ってなかったんだよね。ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下アジカン)のトリビュート・アルバムでリライトやってくれたときに、初めて知って。

R-指定:そうやったんですね!トリビュートアルバムに参加させてもらいましたけど、こうしてお話しするのは初めてですよね、今日は本当に光栄です。僕と松永さんが中学生で思春期まっただ中の時に「リライト」が大ヒットして、よくカラオケで歌ってました。

DJ松永:俺らの世代、アジカンさんはみんなドンピシャです。

Gotch:みんな「リライト」のサビを気持ちよく叫んでくれてるよね(笑)。ラップの世界に入ったきっかけは、なんだったの?

R-指定:一番最初はSOUL’d OUTさんやったんですよ。中学生の時、ラジオから日本語のラップが流れてきて、その時「何この面白いやつ!」って衝撃をうけたのがきっかけで。CDショップやレンタル屋に行って、日本語ラップの曲をたくさん聴きました。ZEEBRAさん、RHYMESTERさんなど、さんピンCAMP世代の人たちにどっぷりはまっていましたね。

Gotch:さんピンCAMP世代の人たちは、日本のHIPHOP界のレジェンドだよね。世代の違う若いグループとも共演もしていて、未だに現役で最前を競い合ってる。

R-指定:そうなんですよね。昨年20年ぶりに「さんピンCAMP20」が開催されて、現役でやっているのみると、かっこいいなと思います。

僕たちの時代はみんな27歳から生きていく-Gotch-

R-指定:僕が25歳、松永さんが26歳で、音楽業界ではまだまだ若手とされる世代やと思うんですけど、Gotchさんって僕たちの年齢の時に何やってはりましたか?

Gotch:その時は、まだサラリーマンをやっておりまして……。

R-指定:そうなんですか!

Gotch:ライブハウスに全然お客さんが来なくて。チケットが5~10枚、よくて20枚売れるくらいだったかな。

DJ松永:今のアジカンさんからは想像できないです……。

R-指定:お仕事辞めたのって、何歳くらいの時なんですか?

Gotch:25歳のときかな。社会人になっても、仕事をしながらバンド活動を続けていたんだけど、25歳の時に作った自主制作CDが売れ出して「これはちょっと働きながらやるのはきついかも」って感じて。その次の年にメジャーデビューしたんだよね。

R-指定:ということは「リライト」をリリースされたのは2004年だから、27歳のときですか?

Gotch:そうだね。27歳。

R-指定DJ松永:おーー

Gotch:27歳から今の人生が始まったと思ってる。アメリカのロックバンド、ニルバーナのボーカル カートコバーンが27歳で死んで、ロックスターは27歳で死ぬ、という迷信みたいなものがあるけど、僕たちの時代はみんな27歳から生きていく、始まる、と思うんだよね。

R-指定:確かに、ほんまそう思いますね。自分たちも軌道にのったのは最近で。

DJ松永 :ちゃんと、音楽で食べていけるな、って実感したのは去年くらいからだよね。

R-指定:でもアジカンさんが「リライト」だした時期に、27やったって聞いたら、もっと頑張らないけないなと思いました。

ジャンル関係なく「名曲」を残したい-Creepy Nuts-

Gotch:どんな30歳になりたいの?

R-指定:30の時には、名曲といわれるものを残したいですね。ジャンルとかも関係なく、誰もが知っていて、口ずさんでくれるような曲。

Gotch:HIPHOPで定番のナンバーでありつつ、ジャンルの枠組みとか超えてJ-POPとしても多くの人に愛されるような曲がつくれたら、かっこいいね。

R-指定:ほんまそれです。実現できたら、ラッパーたちがミュージシャンとして認められるようになるんじゃないかな、と思っていて。

Gotch:ラッパーは、ミュージシャンなんじゃないの?

R-指定:世間一般にはラッパーが「ミュージシャン」として浸透しておらんな、と感じるんです。

Gotch:日本語ラップ自体、歴史がそこまで深くないもんね。

R-指定:そうなんです。日本語ラップの歴史は30年弱で、他のジャンルに比べて浅くて。
ただ、ここ数年でラップのフリースタイル(即興)がテレビでレギュラー番組として放送されていたり、世間から注目され始めているので、頑張るなら今やな、と。

Gotch:最近ラップの学校とかもできて、確かに流れはきているかもね。松永くんはどんな30歳になりたいの?

DJ松永:そうですね……、30歳は結婚、ですかね。

R-指定 :松永さん、すぐ恋愛の話題にしたがるんですよ。

DJ松永:支えてくれる人がいた方が、また音楽も変わってくるんかな、なんて。

Gotch:まずは彼女から、じゃないっけ?

一同:(笑)

Gotch:こうやって、車の中で話すのって本音も出てくるし、くだらない話もできて楽しいよね。

R-指定:僕自身、地元に帰って友達と何をして遊ぶのかって言ったら、ドライブなんですよね。友達の車に乗って、ホンマ朝までずっと喋ってるみたいな。ギャンブルもお酒も、全然やらないですね。

DJ松永:あてもなく、車を走らせるっていうのがいいんですよね。

個人としては「De La Sou」と「Chance The Rapper」の真ん中ぐらいはやりたいと思ってるんだよね。

DJ松永:あ、これGotchさんの新曲ですか?なんかアジカンさんのときと全然ちがいますね。

Gotch:そうだね。自分でドラムとか打ち込んで作ってるんだよね。ベースはひなっち(日向秀和(STRAIGHTENER / Nothing’s Carved In Stone))に弾いてもらって。

R-指定:この曲、思ったんですけどドープ*1っすよね。ヒップホップ的な言葉でいうと。

DJ松永:ブラックミュージックの要素入ってますよね?

Gotch:そう、この曲で一番ベースになっているのは、ジャクソンファイブの「I want you back」で。曲の中でも、同じリフ*2が出てくるんだけど。

R-指定&DJ松永:へー!!

Gotch:個人としては「De La Sou」*3と「Chance The Rapper」*4の真ん中ぐらいはやりたいと思ってるんだよね。

DJ松永:なるほど! このBPM感*5とかまさに。

R-指定:勝手に首が前に動いてリズム取っちゃいます。

Gotch:実は、16のハット*6が鳴ってて、この後(動画 06:54)、入ってくる。

DJ松永:HIPHOPのトラップ*7的な感じですか?

Gotch:そうそう。

DJ松永:お~、すごい!

R-指定:めちゃくちゃHIPHOPですね!

DJ松永:ドラムは完全にHIPHOPですね。

Gotch:ドラムはTR-808*8を使ってHIPHOPの要素を入れたんだよね。
ただ、完全なHIPHOPじゃなくて、フォークの要素も入れたかったから、ギターはこの曲のために最初から最後まで弾いて。

R-指定:ホンマ仰ってたように、ラップと歌の中間の曲というか。聴いた感じ、メロディーもあるし歌っぽいけど、譜割り*9はかなりラップに近く作られてますよね。

Gotch:どうしても歌っちゃうんだよね。もはや職業病だから(笑)

R-指定:(笑)

Gotch:自分で作るとメロディーが絶対ついちゃうから、完全なラップにはならないんだよね。

R-指定:でも、ちょっと入ってくる「ほら」とかはHIPHOPですよね。

Gotch:そうそう。なんか「タタッ」っていうリズムは、HIPHOPの入れ方だね。HIPHOP聴きながら「この譜割りかっこいいな」って結構勉強してる。あと韻を踏むのがすごい、昔から好きで。

R-指定:あっ!Gotchさんの曲聞いてて、個人的にすっごい思ってました。日本語ラップにハマリ始めたのと同じ時期に、アジカンさん聴いてて「なんか気持ちいい。口に出してみたくなるのなんでやろう? あ! 韻踏んでるからや!」みたいな。

Gotch:ゆるく、行の最後で踏んだり。

R-指定:完全に母音で韻を踏むというか、語感が似てる言葉で韻を踏んでいて、それが気持ちいいんですよね。

Gotch:そうなんだよ。だからHIPHOPの曲聴いてて、韻を踏んでるの聴いてると「わかる、気持ちいよね~って」思うんだよね。

*1 ドープ
HIPHOPでは、カッコいい、奥深い、という使われ方をする

*2 リフ
メロディーの一節

*3 De La Sou
1989年代アメリカのHIPHOPシーンに変革を起こし、日本にも大きな影響与えた

*4 Chance The Rapper
インターネット発の話題のスターラッパー

*5 BPM
音楽のテンポ

*6 16のハット
HIPHOPのトラップというジャンルでよく使われるリズム、音

*7 トラップ
HIPHOPの中でも、重低音を強調したビートに、スネアドラムの連続音や、派手な電子音を加える中毒性の高いスタイル

*8 TR-808
オリジナルのリズムパターンを自分でプログラミングできる「リズムマシン」

*9 譜割り
音符に対しての歌詞の付け方

<CREDIT>
■後藤正文(Gotch)
1976年生まれ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギターであり、楽曲のほとんどの作詞作曲を手がける。これまでにキューンミュージック(ソニー)から8枚のオリジナル・アルバムを発表。2010年にはレーベル「only in dreams」を発足し、webサイトも同時に開設。また、新しい時代やこれからの社会など私たちの未来を考える新聞「THE FUTURE TIMES」を編集長として発行するなど、音楽はもちろんブログやTwitterでの社会とコミットした言動でも注目され、Twitterフォロワー数は現在300,000人を超える。
http://gotch.info/
https://twitter.com/gotch_akg
http://www.onlyindreams.com/artist/gotch.html
・『Taxi Driver』
7inch EP (バックアップCD付き)
¥1,500(税抜) / ODEP-010 / only in dreams<収録曲>
A side:Taxi Driver
B side:Farewell, My Boy『Taxi Driver』Music Video
https://youtu.be/QH2xYbpk5ps

■Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)
MCバトル日本一のラッパー「R-指定」とターンテーブリストであり、トラックメイカーとして活躍する「DJ 松永」による1MC1DJユニット。業界屈指のスキルを持つこの2人だからこそ実現できる唯一無二のライブパフォーマンスは必見。2016年1月20日にリリースされた1st MINI ALBUM「たりないふたり」はスマッシュヒットを記録。テレビや雑誌を始め、数多くのメディアにも取り上げられ、ラジオではニッポン放送「オールナイトニッポン R」のパーソナリティを務めるなど、話題に事欠かない。現場でも、クラブやライブハウスから大型ロックフェスまで、シーンを問わず数多くの観客を魅了している。
http://creepynuts.com/
https://twitter.com/creepy_nuts_?lang=ja
・『助演男優賞』Music Video
https://youtu.be/JEUOTHxL8Xw