【Awesome City Club×mabanua】若手として見られなくなって、マイペースにできる今が楽しい。
車の中だと、思わぬ本音が出ることがある。同じ方向を向いているから目が合わないという気安さか、外の世界と切り離された密室が醸し出す親密さか。そんなチャンスを利用して、先輩と後輩が語り合う<8minutes drive>。
今回、8月23日にキャリア初となる新曲入りベストアルバム「Awesome City Club BEST」のリリースを控えるAwesome City ClubのatagiとPORINが、メジャーデビュー当時からお世話になっているというmabanuaとドライブに出かけた。
mabanua:今は群馬に住んでるから、毎日運転してるんだよね。
atagi(Awesome City Club Vo,Gt):今日は運転、ありがとうございます。こうやって車に乗ると、やっぱり車っていいなって思いますね。都内でも車を持っているミュージシャンが多いので……。
PORIN(Awesome City Club Vo,Synth):でもアタさん免許ないじゃん(笑)
atagi:そうなんだよね(笑)高校3年生の夏休みくらいから、親にも免許とった方が良いって言われていたんですけれど、その頃からギターに夢中で、「免許とるお金でアンプ買わせてくれ」とか言っていたんですよね。
mabanua:いい話じゃん!
atagi:今となってはすごい後悔してますよ。
mabanua:免許は、はやいうちに取っておくと良いよね。でも今からでも間に合うよ。
PORIN:メンバーのユキエちゃん(Drums)から「mabanuaさんの運転は優しいよ」って、前に乗せてもらったときの感想を聞いてきたんですよ(笑)
mabanua:本当に?それは良かった。運転は性格が出るって言うからね(笑)
PORIN:普段mabanuaさんは、車で音楽って聴きます?
mabanua:聴くんだけど、自分の音源は絶対聞かないね。たまに車のなかでミックスチェックをしている人の話も聞くけれど、僕は聴き込みすぎて運転が危なくなりそうで(笑)Awesome city clubは車での移動中に自分たちの曲聞いたりするの?
atagi:ライブ音源を聴いたりはしますね。移動中って、外の音も入るからそんなに集中して繊細に聞けるわけじゃないから、「あ、ここ間違えたな」っていうところも少し外の音でごまかされるというか(笑)
mabanua:そこで真剣に指摘しあったら移動中に喧嘩になりそうだもんね(笑)僕は、曲のアイディアが生まれるのは車の中が多いかな。ラジオかけながら、気づくと鼻歌歌っていたりして…。思いついたら車止めて、ボイスレコーダーにメモして……っていうのはよくやってるね。発想が生まれやすい場所な気がする。
atagi:へー、歌えるのいいですよね。下手したら一人暮らしの部屋よりも歌えますもんね(笑)僕はLIVEの楽屋で集中できないときに、車に戻って練習することがあります。
mabanuaとAwesome city clubの出会い。
(写真)mabanua
(写真) Awesome city club
atagi:プロデュースをお願いしたのは、ファーストアルバムが出たときなんで2015年ですね。
mabanua:もう長い付き合いな感じがするけれど、そんなに昔じゃないんだね。
atagi:僕らは一方的に憧れていて、バンド結成直後から「mabanuaさんにプロデュースしてもらいたいね」という話をメンバー内でしていたんですよ。それが、2015年にやっと念願叶ってというかたちでした。
PORIN:事務所を決めるときも、ディレクターから、「mabanuaさんとかと一緒にやったらいいんじゃない」って言われたことで意気投合して、所属を決めるきっかけになったんですよ。
mabanua:そうなんだ!渋谷のVISIONで僕がイベントやっていたときに、隣のスタジオで受付をやっていたたくみくん(Ba,Synth,Rap)が、「僕バンドやっているんで聴いてください!」ってデモをくれたんだよね。ちょっと挙動不審だったけど(笑)、すごい熱意を感じたから聴いてみたんだ。
atagi:その話は初めて聞きました!プロデュースしていただいたのはそこから1年後くらいですね。mabanuaさんは当時おいくつだったんですか?
mabanua:30歳になったばっかりくらいかな。
atagi: 20代の頃はどんな感じだったんですか?
mabanua:音楽で生活してますって言えるようになったのが25、6歳くらい。それまでは辛かったね(笑)。辛いけど楽しかった。
atagi:僕らも、形にならないものを作り続けてる気がして辛かった時期ですね。
mabanua:同じ境遇かもしれないね。ファーストアルバムを作っている頃、日吉で友達とルームシェアをしながらのバイト生活だったんだよね。バイトをしながら、締め切りまでに曲を作らないといけないのが大変だったな。28、9歳になってやっと音楽でやっていけるかなって思えた。親にも、30歳までどうにもならなかったら諦めなさいって言われていたから、ギリギリだったね。
atagi:生活がままならないがために、モチベーションが落ちてしまうこともありますもんね。軌道に乗れたときは、音楽ってなんて楽しいんだろうって思えるんですけれど。
mabanua:atagiくんは、いつから音楽を始めたの?
atagi:僕の場合は、とにかくギターを触るのが好きで、高校の時に曲作りを始めました。MDを使って録音してましたね。
mabanua:Awesome City Clubはしばらく4人だったんだよね?
PORIN:私は、大学を卒業後は、音楽の方に進むかファッションの方に進むか悩みながらも、アルバイト探していました。そんなときにライブハウスで、たまたまスタジオで働いている人に「うち、バイト探してるからこない?」って声をかけられて、その日にのうちに働くことが決まったんです。そのスタジオに行ったら、ちょうど私が入る前の4人のオーサムシティクラブが録音していたっていう偶然があって……。最初は、「MVに出てくれない?」って言われて、『Chirdlen』っていう曲のMVに出たのがきっかけです。
atagi:そこからなし崩し的にメンバーに入ってもらって(笑)
mabanua:すごいきっかけだね〜。30代への不安とか意気込みってある?
PORIN:今26歳なんで、やっぱり考えますね。でもこの間ゲッターズ飯田さんに占いしてもらったら、30歳で大ブレイクするって言ったもらったので楽しみにしてます(笑)
atagi:大ブレイクってすごいね(笑)
mabanua:国民的歌手になるかもしれないってことでしょ。すごいねそれ(笑)。Atagiくんは?
atagi:僕はもうずっと地続きでやってきているので、30歳になったから……っていう意気込みは正直ないんですけど、mabanuaさんが僕たちと出会ったとき30歳だったっていうのを聞いて、もっとしっかりしないとって思いました。
mabanua:30歳ねー。もう若手とは呼ばれなくて、自分たちより年下の勢いあるバンドもいるだろうし、それについてはどう思うの?
PORIN:私は逆にそれが楽しいんですよ。若手として見られなくなって、現状も客観的に捉えられるようになっているから、逆にもっとマイペースにできるようになった気がします。
mabanua:20代でやれることと30代でやれることって、自分は意識していなくても、世の中的には区別をつけられている気がするんだよね。旬なことって、20代の子達がやったら「今きてるね〜」って言われるんだけど、同じことを俺くらいの30代でやると、「なんか媚びてる?」って思われる気がして。例えばDJ KRUSHさんのように世界的な知名度も、本人の歴史もある人だと、トレンドを意識するということも感じさせず、古臭くなることもなく、ずっとリスペクトされる曲を作り続けているから、そういう風に音楽を作り続けられたらいいなって思う。
PORIN:良い曲ってそうですよね。普遍的なものが生み出せていけたらいいなって私も思います。1音目で、「この曲オーサムだ!」ってわかるようなオリジナリティも欲しい。
atagi:なんとなく今まで、「あんなこともいいな、こんなこともいいな」って色々なところに伸ばして来た手を、一度止める時が来ている気がしているんです。これまでにアルバムも4枚作ったんですけど、そこで血となり肉となってきたものをしっかり固めて、これからは後世に残るようなものにしていきたいなと思っています。
mabanua:一回手を止めるっていうと、具体的にはどういうことなのかな?
atagi:自分たちのやっている、やりたい音楽を、その場のアイディアで装っていくことではなくて、自分たちが20代の頃に聴いて育った音楽だったり、好きなものを、ちゃんと掘り下げなきゃなぁと思ってるんです。
mabanua:なるほどね。車のなかってついつい本音が出るから面白いね。
■mabanua
ドラマー/ビートメーカー/シンガーという他に類を見ないスタイルが話題の日本人クリエイター。全ての楽器を自ら演奏し、ブラックミュージックのフィルターを通しながらもジャンルに捉われない音創りが世界中から絶賛される。現在はソロとして、CMやテレビアニメの楽曲制作や、数々のアーティストのプロデューサー、リミキサー、ドラマーとして活躍。U-zhaan × mabanua、Green Butter (budamunk × mabanua) としてユニットとしても活動する。
http://mabanua.com/
■Awesome City Club
2013年春、それぞれ別のバンドで活動していたatagi、モリシー、マツザカタクミ、ユキエにより結成。2014年4月、サポートメンバーだったPORINが正式加入して現在のメンバーとなる。「架空の街 Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマに、テン年代のシティ・ポップをRISOKYO からTOKYOに向けて発信する男女混成5人組。2017年8月23日にはキャリア初となる新曲入りベストアルバム「Awesome City Club BEST」をリリースする。
http://www.awesomecityclub.com/