McGuffin(マクガフィン)

自分自身が「今、燃えてるぞ」って感じることが大事なんじゃないかなと思ってて-ハロルド作石-

1杯のお酒があれば、憧れのあの人とも少し距離を縮めて話すことができる。MCのRIP SLYMEのRYO-Zとゲストが東京の飲み屋で仕事についてゆるく語り合うTOKYO CHILL OUT。

今回ゲストとして、『ゴリラーマン』『ストッパー毒島』『BECK』などヤングマガジンでの連載を中心に数多くのヒット作品を世に出している、ハロルド作石さんをお呼びした。
RYO-Z:RIP SLYMEのメンバーも大ファンのハロルド作石さんに今回来ていただいてうれしいです。本当にありがとうございます。

ハロルド作石:こちらこそ、すごく光栄です。ありがとうございます。

RYO-Z:僕たちが出会ったのは今年の夏くらいですよね。

ハロルド作石:僕が飲んでる時に、ある方をお誘いしたんでよね。そしたらその人が来た途端に僕のことをお店から連れ出して。「いまRIP SLYMEのRYO-Zさんが待ってます」って言うもんだから、あの時は本当に驚きました。緊張しましたよ。

RYO-Z:僕らの作品は何で知ったんですか?

ハロルド:『楽園ベイベー』はもちろんなんですけど。MTVのライブで一度拝見したことがあります。

RYO-Z:それは『BECK』を描かれてた頃ですかね。その当時はどんな音楽に興味ありましたか?

ハロルド:洋楽が多かったですね。周りに影響されて。

RYO-Z:僕らがハロルド作石さんを大好きになったのは、ゴリラ―マンの主人公がHouse Of Painの『JUMP AROUND』を口ずさんだときですね。漫画でヒップホップを感じられた瞬間「あ、この人すげえ知ってる!」って思いました。

ハロルド:90年代って、House Of PainとかCypress Hillとかヒップホップが流行っていたので、僕にとっては主人公が歌ったのもごく自然なことで。なので、あのシーンでこんなに感動してもらえてうれしいです。

仲間がいなかったら、漫画家になっていなかったかもしれない-ハロルド作石-

ハロルド:いつ頃からラップをはじめたんですか?

RYO-Z:高校1年の後半くらいからです。

ハロルド:高校1年生のときからだとかなり長いですね。

RYO-Z:元々はダンスをやっていて、そのバックトラックがヒップホップだったから聴き始めたのがきっかけです。楽器ができなくても、楽譜が読めなくても始められるからやってみよう、ということで始めました。

ハロルド:そのときは周りの友達と始めたんですか?

RYO-Z:その当時からILMARIがいました。

ハロルド:そのときから?

RYO-Z:ILMARIは小学校から知っていて。ILMARIの行ってた学校にPESがいたりとか、DJのFUMIYAもSUくんも友達の繋がりとかで自然と知り合っていきましたね。ハロルド作石さんが漫画家になったきっかけはなんだったんですか?

ハロルド:僕は、漫画が何かわからないときから「漫画家になりたい」って思ってて。小学生くらいかな?

RYO-Z 学校のノートに描いてるみたいな感じですか?

ハロルド:描いてましたね。当時は50円でジャポニカ学習帳が買えて、学校帰りに1日1冊買って、必ず全部絵を描き切るんですよ。

RYO-Z:そんな瞬間でできるものなんですか?

ハロルド:漫画って言っても似顔絵だったりとかです。一緒に漫画家目指そうっていってた友達がいたので、1冊描き切ったら、その友達とお互いの家遊びに行ってノートを交換してました。

RYO-Z:いわゆるフリースタイルバトルみたいな感じじゃないですか。

ハロルド 確かに。そいつは転校生でやってきたんですけど「絵のうまいやつが転校してきた」って学校で話題になって、「俺だって負けんぞ」って。

RYO-Z:ドラマじゃないですか(笑)でもその仲間がいなかったら、やってないんじゃないですか、もしかしたら、ずっと。

ハロルド:漫画家になっていなかったかもしれないですね。

自分自身が「今、燃えてるぞ」って感じることが大事なんじゃないかなと思ってて-ハロルド作石-

RYO-Z:漫画を描く上でどんなとこにこだわってらっしゃるんですか?

ハロルド:こだわりっていってパッと思い浮かぶのは、常に自分自身が変化していかないといけないんじゃないか、と思ってます。

RYO-Z:自分自身が、ですか。

ハロルド:そう、自分自身が「今、燃えてるぞ」って感じることが大事なんじゃないかなと思ってて。

RYO-Z:『RiN』の中で描かれてるような感じですよね。

ハロルド:そうなんです。『RiN』を描いてる最初の段階はよくわかんなかったんですけど、途中から自分は、人の内面の変化みたいなのをもっとよく描きたい、と思ってることに気づいて。さらにその思いが強くなって、『7人のシェイクスピア』では、出てくるキャラクターの内部の変化をより詳細に描いていこうと思っています。

RYO-Z:『7人のェイクスピア』に関しては、実際史実に基づきつつも、ハロルドさんの大胆な物語で本当におもしろいですよね。登場人物の心情をしっかりと描いていくからこそ、リアリティが増してどんどん読み進めてしまう、というか。僕あと1個すっごい聞きたいんですけど、ハロルドさんの描く女の子ってなんであんなにかわいいんですか?

ハロルド:日々努力してます(笑)

RYO-Z:ハロルドさんの漫画で魅力的なのは恋の行方も、本当に気になっちゃうんですよね。

ハロルド:昔は男をいかにかっこよく描くかっていうのが大事だったんですけど、今は女の人が主役の漫画も多いし、RYO-Zさんみたいに楽しみにしてくれている人もいるので、頑張らないとなって思ってます。

サード出すときにはもう一旦出し尽くして、悩みました-RYO-Z-

RYO-Z: 20代のころってどんなマインドでお仕事なさってたんですか。

ハロルド:20代のころは、『ゴリラーマン』を19から描き始めてて。

RYO-Z:ええ!?  『ゴリラーマン』10代から描き出してるんですか。すげえ…。

ハロルド:そうなんです。24か25まで描いたんですよ。

RYO-Z:大作ですよね。本当によく読んでました。

ハロルド:『ゴリラーマン』ってキャラクターものなんで、もうちょっと続けてもいいわけですよ。

RYO-Z:でもやめてしまいましたよね?

ハロルド:雑誌の編集の人も、もっと続けてもいいのにって言ってたんですけどね。でも、いまここでやめないと、そのまま30とか40になってもダラダラと『ゴリラーマン』にしがみついてる自分がやだなって思ったんですよ。別の漫画を描いて、勉強していかないと先がないぞって。だから、25くらいまでは『ゴリラーマン』にただ打ち込んでて、連載終わった後は、さあ次どうしようってもがき苦しみました。RYO-Zさんはどうだったんですか?

RYO-Z:僕らも転機は25なんです。インディーズでデビューした19の時は、周りスタッフの方々が僕たちのことをどうにか育てようと厳しく言ってくれてたんです。僕たちもそれに応えようと頑張ってました。でも、どうも自分の中でうまくいかないんですよね。それで、25歳くらいの時に、パッと”もういいじゃん、別に好きなことやればいいじゃん”って吹っ切れたときがあって。

ハロルド:RYO-Zさんの好きなことって、どういう方向だったんですか。

RYO-Z:こういうものやったらみんなにウケるだろうな、っていうことを一切考えないことです。自分たちが表現したいことだけをやっていく。

ハロルド:曲を作るときに、リリックを書くと思うんですけど、自分の中にある何かを吐き出すわけじゃないですか。デビューする直前ってのは膨大な編集されてない時間と言葉がいっぱいあるからいいけど、その後ってどうだったんですか?

RYO-Z:そうですね、サード出すときにはもう一旦出し尽くして、やっぱり。その時はアウトプットに必死で、インプットが全然足りてないみたいな状態、みたいな。30代になって「どうすりゃいいんだろう、何が原因なんだろう」ってすごく悩みましたね。

ハロルド:俺、手塚治虫記念館行ったことあるんですけど。そのときに映像で手塚先生が「もうネタがない、もうほんとに描けないっていうときが、僕は5回くらいありましたよ」って言うんですよ。

RYO-Z:あの巨匠でも!?

ハロルド:日本中の漫画家の歴史の中で、ずば抜けて才能があって、ずば抜けていっぱい描いてる人ですけど、その人に5回も危機があったのかと思うとちょっと気が楽になりましたね。

RYO-Z:僕はハロルド先生は日常のインプットをドラマに仕立ててしまうのがすごいなと思っていて。たとえば音楽が好きで聴いてたのを『BECK』に、漫画家を目指す過程が『RiN』にと繋がっていると思うんですけど、自分が人とは違うインプットの方法しているな、と感じる部分はありますか?

ハロルド:なんですかね、たぶん好奇心ですね。人よりはたぶんいろんなことに興味があるっていうのは感じています。今日の話だけでも、「おお、RYO-Zさん20代はそうなのか、それで30代、40代はどうなのかな!?」って、未来を想像したり、過去を知ることに対してすごくわくわくするんですよね。あと、人の情熱があるものを聞くっていうのはす
ごい好きで。

RYO-Z:好奇心って行動の原動力になりますよね。アウトプットはもちろん評価される部分なので疎かにはできないんですけど、それを作り出すためのインプットが本当に一番大事だなって思いますね。

ハロルド:インプットがあるから、アウトプットが進化していくっていうのはありますよね。

RYO-Z:僕はまだまだとりあえず、音楽でお酒を飲んでいきたいなって(笑)

<INFORMATION>
■RIP SLYME
RYO-Z、ILMARI、PES、SU、DJ FUMIYAの4MC+1DJで構成される日本のヒップホップグループ。
Official Site : http://www.ripslyme.com/
Twitter : https://twitter.com/ripslyme_com
Instagram : http://Instagram.com/rip_slyme
RYO-Z Twitter : https://twitter.com/ryoujinarita

■ハロルド作石
日本の漫画家。『ゴリラーマン』『ストッパー毒島』『BECK』など
ヤングマガジンでの連載を中心に数多くのヒット作品を世に出している。
アーティストや芸能界にもファンが多くいることで知られている。

■7人のシェイクスピア NON SANZ DROICT(著:ハロルド作石)
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