McGuffin(マクガフィン)

服がもつパワーや可能性を伝えていくのが僕の任務だと思っていて(スタイリスト/TEPPEI)

バーカウンターに並んで座ると、いつもと違う話をしたくなる。今回のTOKYO CHILL OUTは、10年以上の付き合いになるスタイリストTEPPEIさんを呼んだ。
TEPPEIさんはRIP SLYME、星野源、OKAMOTO’Sなどのアーティストやファッション誌、広告、CMなど数多くの媒体を手掛ける東京を代表するスタイリストだ。TEPPEI:かんぱーい!

RYO-Z:いえーい! 付き合い自体はもう10年以上になるかな。

TEPPEI:そうですね、「間宮兄弟」がきっかけで出会って。

RYO-Z:今はスタイリストとして活躍してますけど、「間宮兄弟」では俳優として出てたよね。

TEPPEI:そうですね~

RYO-Z:あの時にはもうプロだったの?スタイリストとして。まだやってない?

TEPPEI:まだプロのスタイリストではなかったです。古着屋さんでプレスとして勤めていました。急にキャスティング会社から連絡が来たときは何事かな?と思いましたね。

RYO-Z:生前の森田芳光監督とお話しする機会があったんだけど、玉木役(映画『間宮兄弟』ヒロインの彼氏役)が決まらなくて困り果てたとき、雑誌でひときわ輝く男の子がいて、すぐにこの子がいいと思った、それがTEPPEIだった、と言ってたよ。

TEPPEI:演技なんてやったことがなかったので一度お断りしたんですけど、森田監督に「そのままでいいから」と言ってもらって、出演を決めました。今思えば、その決断がその後のスタイリストとしてのキャリアにとってすごく大きなターニングポイントになっているなと思います。RIP SLYMEとの出会いにも繋がっていくので。

RYO-Z:今日のスタイリングもやってくれてますもんね。

TEPPEI:そう、そう。今日はいつもと違う時間があるのを知ってますから僕は。

RYO-Z:今日はね、特別ですよ。なかなかバーカウンターで、二人っきりで話すなんて無いですからね。

TEPPEI:そうですね~。こうして二人で飲ませてもらうのは初めてかもしれないです。

実は森田監督からは、俳優やらないかって誘っていただいていました

RYO-Z:映画を1本やり終えて、そのまま俳優になるっていうのは考えなかったの?

TEPPEI:実は森田監督からは、俳優やらないかって誘っていただいていました。でもそれは、端的にいうとお断りしていて。本当におこがましいこととはわかってたんですけど…。

RYO-Z:名監督に誘われたのに?

TEPPEI:すごく光栄でした。でも、スクリーンには映らない演者陣の影での努力、役に向けるストイックさに格の違いを感じていて、ここで軽はずみに「俳優やります」なんて言うのは失礼だと思ったんです。

RYO-Z:TEPPEI自身も撮影中は必死に食らいついていたけど、簡単に追いつけるようなものじゃないと。

TEPPEI:そうですね。だから僕は監督に、「俳優としてではなくて、スタイリストになる夢を叶えて、いつか監督に正式にスタイリストとして誘ってもらえるように頑張ります」と当時お伝えしたんです。

RYO-Z:どうして、そこまでしてスタイリストになりたかったの?

TEPPEI:僕は服に救われて、人生をこう導いてもらったような立場なので、服のパワーっていうのは信じています。それは時代が変遷しても世の中の在り方が変わっても、その服が純粋に放っているメッセージとかパワーっていうものは変わってないなと僕は思っていて。僕自身がそのメッセージを受け取って、着用してくださる方を彩ることで、服の持つ力と一緒にその人の魅力を多くの人に届けていけたらいいなと思っています。

RYO-Z:本当に服に導かれている人生だよね。

TEPPEI:受験勉強しているころ、僕その当時地元の滋賀県にいたんですけど、東京を中心とした放たれるパワーが、滋賀にまでも届いてまして。それがすごくパワフルで魅力的なものだったんです。

RYO-Z:1990年代くらいのときね。あの時代すごく濃いよね。

TEPPEI:本当に色んなカルチャーが混在していたときで、僕はDCブランドをこよなく愛する人種でした。ちょっと近未来的で、すごくデザインがふんだんに盛り込まれた、かなり先鋭的な服が本当に沢山生まれていた濃密な時代だと思います。僕は思春期に、その時代の息吹を感じて当時は突き動かされるようにして上京しました。原宿というカルチャーのど真ん中で僕はずっと過ごして今の僕はできています。

服がもつパワーや可能性を伝えていくのが僕の任務だと思っていて


TEPPEI:でも、最近すごく思うのは、今の東京の盛り上がりっていうのは、当時に比べてスモールなものになってしまったな、ということです。

RYO-Z:確かにそう感じるかも。

TEPPEI:ファッションに対するみんなの価値観って時代によって変わっていくものだとも思っているので、あり方も変わってくと思うんですけど、あの時僕自身が突き動かされたようなパワーって、あるのかな、と思うんです。服がもつパワーや可能性を伝えていくのが僕の任務だと思っていて。

RYO-Z:俺は、忘れられないんだけど。TEPPEIが「RYO-Zさん、展示会行きましょう」って連れてってくれたのよ。

TEPPEI:一緒にね、WTAPSの展示会に行きましたね。

RYO-Z:当時ファッションに対してちょっと投げやりになってたところがあって。人前に出させてもらうときはスタイリングしてかっこよくして頂けるんだったら、私服なんかどうでもいいやっていう気持ちになってたんだよね。でも、WTAPSの展示会に行ったときに、俺やっぱアメカジ好きだなって原点回帰して、TEPPEIがぐっと引き戻してくれた感じがしたんだよね。

TEPPEI:ステージの上だけじゃなくて、リアルなストリートシーンでもっとファッションを楽しんでいってほしかったんですよね。

RYO-Z:今日こうやってまたスタイリングしてもらって、あ、いますっごい楽しいって思うもんね。

TEPPEI:服って楽しいんですよ。僕は若いころ自分で着る洋服なんかはブランドの服でも袖を切ってしまったりとか、勝手にスタッズ打ってみたりとか、周りのことは気にしないで自分のやりたいようにただ自由に服を楽しんでいましたね。

RYO-Z:高いジーンズにダメージ入れてみたりね。

TEPPEI:そうです、そうです。僕が服を「自由でただひたすらに楽しむ」っていう感覚が、RIP SLYMEの音楽と通じるものがあるんです。だから僕がRIP SLYMEのスタイリストをやってくれと言われた時、誰かの真似事ではなくありのままの自分で、思いを素直にぶつけていけそうだな、と思って飛び込みました。

RYO-Z:なんかうれしいな。

TEPPEI:アーティストという立ち位置でファッションも背負って、音楽と一緒にファッションのパワーとかメッセージを、多くの人に届けていってくれるのがRIP SLYMEなんですよね。

ファッションはなりたい自分になるための助走

RYO-Z:今の20-30代の人たちのファッションをみてどう思う?

TEPPEI:ファストファッションっていうものが出てきて、ファッションの在り方が確かに変わりました。悲観的な部分だけではなくて、ファッションを捉える層っていうのは結構、増えたんじゃないかなーとは思ってます。でもマイノリティな感覚を狙うファッションをしてる人が少ないなってイメージは、あります。

RYO-Z:みんな似たような感じなっちゃってるよっていうね。差別化があまり成されてなくって。だからハロウィンみたいなのがあると、「あたしめっちゃがんばろ!」とか「俺超がんばる」ってなるのかなーって思ってて。

RYO-Z&TEPPEI:そのパワーがあるんだったら!

RYO-Z&TEPPEI:(笑)

TEPPEI:日常のファッションに力を注げると毎日もっと楽しいと思うんですけどね。例えば靴下とか。

RYO-Z:靴下オシャレする人は本当に上級者だと思う。

TEPPEI:別のアーティストの方なんですけど、いつもスラックスとドレスシューズを履かれるんですけど、ちょうどくるぶしくらいのところからチラっと見える靴下に僕はこだわっていて。

RYO-Z:この少しのスキマから見える部分ですね。

TEPPEI:靴下にこだわり出してから2・3年経ちますが、ファンの方から「とにかく靴下がかわいい」っていう声を聞くのが本当にうれしくて。ファッションって、おおよそどう見てほしいかっていう他人に向けてのメッセージと、自分の深堀っていう多分2方向あるじゃないですか。

RYO-Z:あるある

TEPPEI:今日みたいなお洒落な格好でRYO-Zさんが三軒茶屋に現れ続けたら、「RYO-Z=お洒落」っていう名刺になると思うんですよね。酔っぱらった時は汚れちゃうし、狭い店だったら暑いから着心地はよくないかもしれません。でも、周りの環境とか関係なくお洒落をして出て行ってそこに居るっていうのは、「お洒落だな、かっこいいな」ってみんな言うと思うんです。

RYO-Z:そうだね、お洒落な格好をして街に出るのも大事だよね。

TEPPEI:僕がいいたいのは、その服を着てどんな自分になりたいかってことですよね。

RYO-Z:そこ重要だよね、ファッションはなりたい自分になるための助走でもあるわけだね。

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